Carlosの喰いしごき調査委員会 ある夏の暑い日の話。その日の午前中は島原市内の島原城(注1)を観光していた。天守閣の中はまだ涼しかったが、午前中とはいうものの屋外は日差しが強く、気温はさらに上昇し続けていた。流れる汗を拭き拭き城内をしばらく散策していると昼時になり、お腹も空いてきた。せっかく島原まで来たのだから島原名物を食べようということで、島原城の近くにある老舗・姫松屋さんで具雑煮を食べることになった。 2.具の沢山入った雑煮 ![]() この具雑煮、土鍋での中で、グツグツ煮えながら運ばれてきた。「具雑煮」とは具の沢山入った雑煮と言う意味だろうか、丸餅が五つ入っている他に、穴子、ごぼう、卵焼き、椎茸、凍り豆腐、レンコン、鶏肉、春菊に長崎白菜(注2)とちくわにカマボコ(注3)とかなりバラエティーに富んだ「具」が入っている。おダシは鰹節、とてもあっさり薄口に仕上がっていて、上品で美味しい。少し甘く感じるのは、この地方の甘めの醤油を使っていいるためと思われる。 この具雑煮を食べていると、何だか懐かしい気分になってくる。私の実家でお正月に食べるお雑煮が島原風の流れを汲むお雑煮であり、この具雑煮と共通するところがあるからだろうか。 3.元は陣中食
4.灼熱の具雑煮 その時はそんな歴史的背景なんてすっかり忘れて、美味しい!美味しい!と夢中になって具雑煮を食べていた。ふと気が付くと、引きはじめていた汗が、またも流れ出しているではないか。土鍋でグツグツと煮えている具雑煮をハフハフ、フーフーしながら食べている訳なので汗が出てきて当たり前だ。先ほどまで島原城内散策で蓄熱された太陽熱が土鍋の遠赤外線によって呼び戻されたようだ。店内はクーラーが効いているにも関わらず、体が胃袋を中心に暖まってきてしまった。暑いときに熱いものを食べると汗が引いたときに涼しくなるというが、汗が一向に引かない場合は、何時までも暑いままなのが良く分かった。 5.雲仙は山の上 ![]() 岩と石ころがむき出しになった地表から、高温の蒸気が吹き出し、高熱の温泉が湧きだしており、あたりは硫黄の臭いで充満している。まさに昔の人が描いた地獄絵図の背景そのものである。地熱と吹き出る蒸気のためか地獄内を歩いているとかなり暑く感じる。さらに午前中に島原城の上で燦々と照っていた太陽は雲仙の地獄の上でも衰えることはない。高原の避暑地に来たつもりが、下から焼かれて、上から蒸される灼熱の地獄を歩くことになってしまった。 6.炎熱の卵 ![]() 袋から卵を出したのは良いが、この卵、蒸したてで恐ろしく熱い。素手ではとうてい持つことが出来ないくらい熱く、殻なんてしばらく剥けそうにない。しばらくテーブルの上を転がして待つこと数分、やっと、触れる程度までになってきたので、ゆっくりとではあるが殻を剥くことができた。小さく切った新聞チラシで包まれた塩を少し付け、固茹で(固蒸し)の卵を一口食べてみると。中はまだまだ熱く、口の中を火傷するかと思った。地獄の独特の雰囲気のためにそう感じたのか、温泉蒸気の威力か、はたまた、蒸すという調理法のためだろうか、普通のゆで卵より味が濃縮している様に感じた。 しかし、この卵、本当に熱い。美味しいもんだから二つも食べたが、二つとも同じように熱かった。当たり前と言えば当たり前であるが、熱い卵を二つも食べたら余計に暑くなった。汗がポロシャツの中を瀧のように流れているのを感じた。 結局、その日は、太陽、具雑煮、地熱、卵のおかげで、中から外から、上から下から、暑さと熱さに苛まれた一日であった。 暑さで痩せたか?具雑煮と卵二つで逆に体重は増えたかも...。 注1 島原城: 1616(元和2)年、松倉豊後守重政の築城による。1964(昭和39)年に復元。現在、天守閣はキリシタン史料館、また、櫓は北村西望記念館、民具資料館などとなっている。 注2 長崎白菜: 別名「唐人菜」。白菜と名前にあるが、実際には白菜ではなく中国野菜ターサイの近縁種らしい(野菜園芸大事典)。お雑煮に欠かせない他、漬け物にも使われる。 注3 カマボコ: 二種類入っていたカマボコの一つは、卵で巻かれた白いカマボコで刻んだキクラゲが入っているものだった。これは子供の頃から私の大好物の佐藤蒲鉾店の「浪花巻」に違いない! 注4 南有馬町: 町の公式HPには島原の乱や原城跡に関する情報が詳しく載っている。 注5 雲仙: 雲仙観光協会のHP「るるる雲仙」にその歴史などが詳しく載っている。 注6 サツマイモ: 島原地方の呼び名は「といも」。雲仙でもこの名前で売られていた。 ※上記のリンク掲載について、御不備等ございましたらこちらまで御連絡よろしくお願い致します。速やかに対処致します。 saitamaya.net webmaster Hiroyuki Arai |