Carlosの喰いしごき調査委員会 1.まるで水族館 お店には紙に印刷された普通のメニューも有るのだが、これら水槽で飼われている(?)魚介類を自分で選び、好みの調理法を指定して出してもらうこともできる。我々も普通のメニューからは「海鮮汁ビーフン」と「カンクン炒め」(注1)といったアッサリした料理だけをオーダーし、あとは水族館から選ぶ事にした。 2.大シャコ 水槽をながめる我々には流暢な英語を話す中国系のオバサンがピッタリ付いてオーダーを取っていた。このオバサンによると大シャコのお薦めの調理法はカラアゲなのだそうだ。早速、一尾をカラアゲにしてもらうことにした。 3.ニシキエビ 4.黒く蠢くもの メモを取りながら我々に付いてきてくれている店のオバチャンに旨いのかどうか聞いてみた「悪くはない」と中途半端な答えだ。お薦めの調理法はバーベキューなのだそうだ。目の前の珍品を見逃すわけにはいかないのでカブトガニBBQもオーダーリストに加えてもらった。 5.注目の的 あれこれ美味しいシーフードを食べていたところに、とうとうカブトガニBBQが運ばれてきた。厨房から出て来て我々のテーブルに着くまでの間、他の客(主に欧米人観光客)の目はカブトガニに釘付で、どこのテーブルに運ばれるのか興味津々にカブトガニBBQを目で追っていた。テーブルに置かれた後も周りからの視線は痛いほど感じた。我々がどんな顔をしてカブトガニを食べるかその反応が気になるのだろう。 6.天然記念物の味 日本なら天然記念物として手厚く保護されるはずのカブトガニであるが、見た目ほどその味はオドロオドロしいものではなかった。臭みを消すためだろうか、酒を大量にふって調理してあるようで、少々酒臭い感はあったが、普通のカニのカニミソや卵の味と非常に似ている。目をつぶって食べれば普通のカニミソやカニの卵と間違える人もいるかもしれない。うーん、まずまず美味しいではないか! ただし、黒灰色の外骨格と緑灰色の内臓を持つ節足動物は、やはりその見た目が悪い。恐竜の時代から同じ格好をかたくなに守り続けてきたような頑固者の生きた化石である。その内臓や卵を食べている訳であるから、いくら美味しくても視覚的マイナス要因は大きい。 7.マレーシア人は食べない?中国人は食べる? 文献(注7)によるとマレーシア人はカブトガニを食べないそうだ。注文を取っていたオバチャンにカブトガニの味を聞いたときに歯切れの悪い答えだったのは、そのためだったのだろうか。お隣のタイではカブトガニを食べるので、マレーシアの漁師がカブトガニを捕ってもタイの業者に売ってしまうそうだ。また、別の文献(注8)によると、タイの市場にカブトガニの卵だけを別に売られていることもあるそうだ。同じ文献によると中国でも台湾や福建省でもカブトガニは「ホウ」(注9)と呼ばれ、蒸したり焼いたりして食べるとのことである。 8.もう沢山 さて、一緒にシーフード三昧していた妻はというと、カブトガニは一口食べただけで、ピリ辛ニシキエビや海鮮汁ビーフンばかり食べている。もともとカニミソがそんなに好きではないこともあり、カブトガニ「もう沢山」なのだそうだ。 カブトの長径が40cmを越えていたと思う。そんなカブトガニの腹にびっしり詰まったミソと卵を、結局、ほとんど1人で食べることになってしまった。普通のカニのカニミソでもそんなには食べられるものではない。私も妻に続いて、カブトガニは「もう沢山」と思うようになってしまった。 注1 カンクン: 学名Ipomoea aquatica ヨウサイとも呼ばれるヒルガオ科の野菜。茎の心が空洞なので中国では空心菜とも。東南アジアで広くみられ、クセが無く炒め物に最適。 注2 テレビ番組: 私の大好きな番組、朝日放送「探偵!ナイトスクープ」で、ガラスを割るシャコがいることを信じてもらえない男が、その事実を証明するというお話をやっていた。TBS「どうぶつ奇想天外」でもやってたかな。 注3 ニシキエビ: 学名 Panulirus ornatus 間違えても「ニシキヘビ」ではない。でも、ニシキヘビはでかいから食べがいがあるだろうなぁ。 注4 独特の体型: ガミラス帝国を破った宇宙戦艦ヤマトの前に立ちはだかった第二の敵、白色彗星軍の戦闘機がカブトガニ型だった。 注5 カブトガニ: 節足動物、剣尾目カブトガニ科に属する。日本や台湾に生息するのはカブトガニ(Tachypleus tridentatus)、東南アジアにはミナミカブトガニ(T. gigas)、マルオカブトガニ(T. rotundicaudatus )が生息する。我々が食べたのはどっちだろうか? 注6 捕って喰うほど: フロリダ在住の知人(日本唯一のプロマラソンスイミング選手松崎氏に聞いたところによると、アメリカ、ニューヨークはロングアイランドの海岸ではハリケーンの翌日には大量のカブトガニが打ち上げられるのだそうだ。食べる人はいないとのこと。 注7 文献: 根津清著、ダイヤモンド社刊、「東南アジア丸かじり!」 注8 別の文献: 周達生著、平凡社刊「中国食探検」 注9 ホウ: 漢字は...「學」から「子」を抜いた物(つまり冠の部分)の下に「魚」を入れた漢字 ※上記のリンク掲載について、御不備等ございましたらこちらまで御連絡よろしくお願い致します。速やかに対処致します。 saitamaya.net webmaster Hiroyuki Arai |